ビブロフィリアの書斎

鳥頭が鑑賞した物語の紹介

6.天使は奇跡を希う

【紹介日】
2022.2.18(金)


【今回の物語】
『天使は奇跡を希う』

 

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【作品媒体】

小説

 

【著者・監督】

七月隆文


【出版日・公開日】
2016年11月10日


【出版元・製作元】

文藝春秋

 

【あらすじ】
瀬戸内海にほど近い街、今治の高校に通う良史のクラスにある日、本物の天使が転校してきた。正体を知った良史は彼女、優花が再び天国に帰れるよう協力することに。幼なじみの成美と健吾も加わり、四人は絆を深めていく……。

これは恋と奇跡と、天使の嘘の物語。

「私を天国に帰して」彼女の嘘を知ったとき、真実の物語が始まる。(裏表紙より引用)


【感想】

冒頭から存在感溢れる天使・優花の様子が本当に面白く感じます。エネルギーに溢れており周囲を振り回し、様々なきっかけを次々と生み出す優花。そんな彼女に巻き込まれる主人公・良史とその周囲にある、縁故溢れる仲間たち。

彼らが織り成す青春劇に心地良さを感じる前半から一転して、後半部は文字通りに世界がぐらりと変わります。優花は突拍子も無く様々な行動を起こしますが、その全てに裏打ちされた理由があるならば。

 

七月先生の特長なのかもしれませんが、物語の仕掛けが本当に大掛かりで、その癖展開部までその仕組みを感じさせない作り方は本当に見事ですね。

この仕掛けによって主要人物が突然見知らぬ姿に化け、読者が新しい物語へと放り込まれる様は面白味の塊といっても過言ではありません。

また物語の舞台を尊重し、その土地柄を作中に表現する描き方は違和感もなく、物語に深みを与えます。

映画化された小説『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の公開によって京都を訪れるファンが多数おられたのも納得です。ちなみに、鳥頭は趣味も相まって今治しまなみ海道に対する探訪欲がごうごうと燃え上がりました。

 

優花が希望を見出し思わず縋り付いた賭け。その非情さにも挫けず前を向き続ける彼女が起こした『奇跡』には、本当に心が暖まりました。

 

お立ち寄り頂きまして、ありがとうございました。
次回も宜しくお願い致します!
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